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白内障の話

白内障とは

白内障とは眼の中にある水晶体というレンズが白く濁ってくる病気です。
 
疾患の簡単な解説
水晶体の構造

 水晶体は、眼の奥にある網膜にピントを合わせる役目をしています。これはちょうどカメラのレンズがフィルムの上にピントを合わせる役目をしているのと同じです。

 水晶体は下図のような構造をしています。核は加齢とともに次第に大きく形成されます。

水晶体1
水晶体2  水晶体3

 前嚢は約12μ、後嚢は約4μの厚さといわれています。ものを見るとき光はすべてこの水晶体を通って眼の奥に進みますから、水晶体が濁れば、すりガラス越しに物をみるのと同じで見にくくなります。

 
水晶体の加齢変化、老人性白内障

 水晶体が濁る原因は、加齢性の変化によるもの(老人性白内障)がほとんどです。

 水晶体はタンパク質33%、水分66%、ミネラル1%から構成されていますが、加齢とともに紫外線などの外界の誘発因子により不溶性蛋白が増加し硬く(調節力の低下の原因でもある)なってきます。また蛋白質中のアミノ酸の一部が光で分解されキヌレインなどが増加し着色するとともに、大きな蛋白分子(HMW protein)が増加し散乱光が増えてくるのです。

 水晶体細胞の代謝に必要なのビタミンCやグルタチオンも減少し、ミネラルでは、カリウムが減少しナトリウム、カルシウムが増加してきます。

 
その他の原因

 糖尿病、アトピー性皮膚炎などの全身病や緑内障、ぶどう膜炎などの眼疾患に続発するもの、薬の副作用(ステロイド系、抗精神薬、抗コリンエステラーゼ薬など)や、放射線、外傷によるもの、遺伝(常染色体劣性遺伝のWilson病{hepatolenticular degeneration}や、常染色体優性といわれている比較的早期におこる老人性白内障)などで白内障になることもあります。



白内障の分類

白内障の分類1
白内障は混濁の部位によりそれぞれ以下のように呼ばれています。

1
嚢白内障
2
皮質白内障(浅層)
3
皮質白内障(深層)
4
層間白内障
5
核白内障
6
嚢下白内障

白内障の分類2
また白内障は混濁の程度により

1
初発白内障
2
成熟白内障

に分類されています。

 
白内障の自覚症状は? 
 眼の中のレンズが濁るのですから視力が低下し見えにくくなるのですが、その訴えは様々です。ひとくちに白内障といいますがレンズの濁り方はそれぞれの眼により違うため、症状も変わってくるのです。レンズの濁りが増すにつれ、徐々に視力低下や、かすみ、まぶしさ、単眼複視(ものがぶれてみえる)を感じる場合が多いのですが、タイプによっては数日の内に急激に視力不良となる場合もあります。

 核白内障の場合、核の部分の屈折率が大きくなり、屈折度が近視化し老眼鏡が不要になる場合もあります。

 現在白内障手術は日本全国で年間  眼程度行われており、手術機具および眼内レンズの性能の向上に加え、手術手技の改良がすすみ年々手術適応の範囲も次第に拡がっています。

 手術時期の決定にあたっては以下に挙げるような種々の要素を勘案します。

1
視力
2
良いほうの眼の視力
3
片眼性か両眼性か
4
白内障の成熟度
5
年令
6
職業、社会的活動状況、両眼視機能の必要性
7
全身的健康状態
8
生活環境(独り暮らしか?)
9
術後の矯正法の予測
10
術眼のその他の眼疾患
11
患者の不自由度の総合的評価
12
患者の手術への願望

 現在白内障手術と同時に眼内レンズを挿入する場合がほとんどですが、以下の場合には慎重に検討する必要があります。   

1
小児白内障 
2
風疹白内障
3
強度近視、強度角膜乱視 
4
高度弱視
5
併発白内障(ぶどう膜炎、糖尿病等)
6
無虹彩、大きな虹彩欠損、虹彩萎縮 
7
浅前房
8
小眼球 
9
滴状角膜、角膜上皮内皮ジストロフィー
10
外眼、内眼の感染 
11
唯一眼
12
緑内障
13
網膜剥離の既往、またはおそれのあるもの
14
その他重篤な眼疾患、全身疾患、アルコール中毒、知能の低い人
15
手術に理解のない人

 

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具体的な症例

以下に、以前所属していた病院での手術症例を示し、白内障の症状や治療経過をみたいと思います。
症例1(老人性白内障1)
年齢
71歳 女性 H.S.
初診
H10年7月31日
主訴
両眼視力低下(特に右眼)
プロフィール
ピーナツ栽培
現病歴
H4年ごろより視力低下および流涙を自覚、前医にて点眼治療
流涙は改善したが視力低下すすんでいる
既往歴
特記すべきことなし
一般眼科所見
視力
Rv=0.3(0.4 x S +0.25D C +2.00D Ax 175°)
Lv=0.5(0.6 x S +0.25D C +2.00D Ax 175°)
眼球運動
異常なし
瞳孔
瞳孔径左右差なし,輻輳、対光反射正常
外眼部
異常なし
前眼部
角膜 透明
前房 前房深く炎症所見なし
中間透光体 
水晶体 皮質混濁を認め、核硬度grade 2
前眼部写真
 
眼圧
右12mmHg、左11mmHg
眼底
異常なし
経 過
右白内障手術強く希望し、H11年1月20日 右眼超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術施行
右視力改善しH11年1月28日には1.0
         H11年2月12日には1.2〜1.5となる。

視力の左右差気になるため左眼白内障手術を希望

H12年1月19日
左眼超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術施行

H13年4月14日
視力
Rv=1.0(1.2 x S +0.75D C -0.50D Ax 100°)
Lv=1.0(1.2 x S +0.75D C -1.00D Ax 100°)
他著変なし
普段は裸眼で生活。読書時は従来の近用眼鏡使用。
 
症例2(老人性白内障2)
年齢
75歳 女性 K.Y.
初診
H12年5月24日
主訴
まぶしい、うっとうしい、ものがぶれて見える
現病歴
H10年ごろよりかすみ、単眼複視、充血を感じていた。前医にて点眼治療。充血は改善したが視力低下すすんでいる
既往歴
特記すべきことなし
一般眼科所見
視力
Rv=0.7(0.9 x S +0.50D)
Lv=0.7(1.0 x S +0.75D C -2.50D Ax 90°)
眼球運動
異常なし
瞳孔
瞳孔径左右差なし,輻輳、対光反射正常
外眼部
異常なし
前眼部
角膜 透明
前房 やや浅いが炎症所見なし
中間透光体 
水晶体 皮質混濁、核硬度grade 1.5
前眼部写真
 
眼圧
右11mmHg、左11mmHg
眼底
異常なし
経 過
矯正視力良好であるが、右白内障手術強く希望したためコントラスト視力測定(日本点眼社製、近見視標)。
      コントラスト 90%   60%   6%
        右眼  10(0.8)  5(0.25)  3(0.16)
        左眼  11(1.0) 10(0.8)   5(0.5)
        数字は視標番号、( )内は換算小数視力
測定結果は白内障のない40歳の場合のコントラスト視力
      コントラスト 90%   60%   6%
            13(1.6)  12(1.25)  9(0.63)
に比較し低コントラストでの視力低下が大きく

H12年9月13日
右眼超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術施行

H12年9月20日には矯正視力1.2〜1.5となり、
コントラスト視力も
      コントラスト 90%   60%   6%
        右眼  11(1.0)  8(0.5)  7(0.4)
に改善(下図)

H13年4月11日左眼も白内障手術希望により、左眼超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術施行

H13年4月13日には左矯正視力1.5〜2.0となり現在外来にて術後経過フォロー中
      視力
        Rv=0.5(1.2 x S -0.75D C -1.25D Ax 130°)
        Lv=1.5(1.5 x S +0.50D C -0.75D Ax 85°)
       他著変なし
普段の生活は裸眼で困っていないので眼鏡処方はしていない。
 
症例3(老人性白内障3)
年齢
80歳 男性 F.T.
初診
H11年6月22日
主訴
右眼視力低下
プロフィール
特記事項無し
現病歴
H10年ごろより視力低下および流涙を自覚、前医にて点眼治療
流涙は改善したが視力低下すすんでいる
既往歴
高血圧 内服治療中
一般眼科所見
視力
Rv=眼前指数20cm
Lv=0.15(0.2 x S +1.25D C +3.00D Ax 175°)
眼球運動
異常なし
瞳孔
瞳孔径左右差なし,輻輳、対光反射正常
外眼部
異常なし
前眼部
角膜 透明
前房 前房深く炎症所見なし
中間透光体 
水晶体 右 成熟白内障、
        核硬度grade 5〜(混濁の中心が濃茶)
      左 皮質核白内障
        核硬度grade 3
前眼部写真
 
眼圧
右15mmHg、左18mmHg
眼底
右眼;透見不可
経 過
右白内障手術強く希望。
眼底透見出来ないため 網膜電図(ERG)検査施行
      
      ERG図
      
      
反応良好のため右眼視機能良好の可能性大きいと判断し、

H11年10月13日 
右眼嚢外摘出術および眼内レンズ挿入術施行
右視力改善しH11年10月17日には1.0
    Rv=0.7(1.0 x S -0.75D C -0.75D Ax 45°)
その後左眼の視力低下も気になり左眼白内障手術を希望

H12年9月13日
左眼超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術施行

H12年11月18日の時点で遠用眼鏡作成 (近くは裸眼で見える)
処方 PD=65mm
    Rv=0.07(1.0 x S +0.75D C -4.50D Ax 90°)
    Lv=0.2(1.0 x S -2.25D C -1.00D Ax 70°)
       他著変なし

ERG検査について
眼に光が入ると、網膜にある光受容器細胞がその刺激を受け、
次々に網膜内の細胞で電気的信号に変換して脳内へ伝達します。
       
ERG(electroretinogram)はこの現象を利用して、コンタクトレンズ電極を装着し、光の刺激を与えて得られる網膜の微少な電気反応をを記録するものです。
白内障の術前検査では、どのような波形であれ反応が得られれば手術の適応になります。
全く反応の得られない疾患として、網膜全剥離、網膜色素変性症、後天性網脈絡変成などがあります。
 
症例4(白内障強度近視)
年齢
60歳 男性 T.J.
初診
H12年7月8日
主訴
視力不良、眼鏡で視力が上がりにくい。
眼鏡なしで生活したい
現病歴
学生時代より強度近視。H8年ごろより視力低下、
前医にて点眼治療していた。.
既往歴
 
一般眼科所見
視力
Rv=0.02(0.8 x S -12.50D C -2.50D Ax 90°)
Lv=0.04(0.9 x S - 9.00D)
眼球運動
異常なし
瞳孔
瞳孔径左右差なし,輻輳、対光反射正常
外眼部
異常なし
前眼部
角膜 透明
前房 深く炎症所見なし
中間透光体 
水晶体 後嚢下混濁を認め、核硬度grade 1.5
眼圧
右16mmHg、左16mmHg
眼底
両眼、豹紋状眼底、右軽度近視性黄斑症、
近視性の網脈絡膜変成なし。
眼軸長
右29.69mm、左27.47mmHg
経 過
矯正視力は比較的良好であるが、本人は視力の低下(中央部後嚢下の混濁によるものとおもわれる)を強く訴えており、黄斑症による視力不良の可能性も説明するが、屈折矯正を含めた白内障手術強く希望。

H12年9月27日
右眼、超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術施行
(目標屈折異常度0Dに設定し、3DのIOL挿入)
術後1週目の右視力は
     Rv=1.0(1.2 x S -0.25D )であったため、患者さんと相談し、
左眼は目標屈折異常度-2Dに設定し、10DのIOL挿入

術後1週目の左視力は
     Lv=0.3(1.2x S -2.00D C -1.25 Ax 30°)
現在まで右眼視力も良好に保たれ、運転時は眼鏡装用(H12年10月27日 処方)するものの、日常生活では裸眼で過ごしている。
 
以上示したのはいろいろなタイプの老人性白内障です。
症例1がいわゆる老人性白内障、
症例2が老人性白内障の初発型、
症例3が老人性白内障の成熟型、
症例4が屈折矯正手術の要素を含む白内障

で、 それぞれ留意するポイントや検査項目が少しずつ異なっています。

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白内障で注意する点

他のタイプの白内障で注意する点をいくつかあげておきたいと思います。
中年より若い方の白内障

 外傷の既往がないか、アトピー性皮膚炎、薬剤内服、全身疾患の有無について、よく問診および検査をすすめます。

 外傷があると、チン氏帯が断裂しやすく慎重な操作および水晶体落下時の対処準備が必要。
アトピー性皮膚炎で白内障がある場合、網膜剥離も合併していることがあるので術前に十分な検査が必要です。
現在、一般的に眼内レンズはよほど幼児でなければ挿入します。.

 
糖尿病のある場合

 内科医と連係し血糖コントロールをすることが大切です。
コントロール不良の場合、術後の治癒がおくれたり、合併症のリスクが上がります。
また網膜症の程度により、手術前後に網膜レーザー光凝固術を施行することがあります。
活動期の網膜症では、沈静化を待って手術を施行します。
一般に活動期にあるぶどう膜炎等では沈静化して6ヶ月程度が手術時期の目安です。

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